〜点字メニューに音声を〜
札幌市西区の一般社団法人「いっぽん」が点字と音声ガイド付き飲食メニューの普及を進めている。
「いっぽん」の代表理事を務める佐久間信語さん(43)の友人で視覚に障害をもつ柴田俊也さん(34)が、自らの体験を踏まえ、「視覚障害者が1人でも食事できるように」と着想を伝えて製作した。
柴田さんの趣味は飲食店でおいしい物を食べること。
しかし、左目でかろうじて光を捉えることができる程度のため、外食時には、友人らにメニューを読んでもらう必要があり、気を使ったり、商品を覚えられなかったりで、好きなものの注文をあきらめることが少なくなかった。
そんな状況で柴田さんは佐久間さんと訪れたファミリーレストランで点字のメニューを発見。
「いろいろな店にあれば、食事を楽しめる視覚障害者が増えるのでは」
と2014年に2人は「点字メニュー推進プロジェクト」を立ち上げた。
紙に点字を打った当時のメニューは、札幌市内のカフェなど10店舗が導入してくれた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で状況は変化。
人との接触を控えることや「黙食」が呼びかけられ、柴田さんの外食機会も減った。
同じ思いをしている障害者がいるのではないか」。
そこで考えたのが衛生面にも配慮したメニューだった。何度も消毒できるようにラミネート加工を施し、点字が分からない人でも利用できるようにQRコードから音声ガイドを聞ける新機能を付けた。
昨年完成した改良版のメニューを市内のカフェで試したところ好評で、今年から本格的に普及活動を開始。
2月には市内の飲食店から「常連に視覚障害者がいるから導入したい」と発注があるのなど出だしはまずまずだという。
「日本中で障害者が笑顔で食事ができる、そんな優しい世界が広がってほしい」。
札幌市内で100店舗と道内外への普及を目標に掲げ柴田さんらは、飲食店への説明に奔走している。
点字メニューに関する問い合わせは「いっぽん」(info@ippon-hokkaido.com)へ。
※記事が読めない方への配慮として、2023年5月3日(水)、5月20日(土)読売新聞の記事を一部引用。